ひとナツの恋
「そうなんすよ〜こいつ、なっちゃんのこと好きなんですって」
「おいっやめろ…!!」
そんな、夏のこと好きとか変なこと言うなし。
いや、好きなんだけどさ…夏のおばあちゃんに言わなくたっていいだろうが!!
「そうか、海渡君はやっぱりなっちゃんの事が好きなんだねえ。
なっちゃんは一昨日来たときよりも雰囲気が柔らかくなったからねえ。きっと海渡君たちのおかげなんだろうね」
「え?」
俺らのおかげ…?
「こんなこと、わしから言うのは良くないんだろうけど…
なっちゃんはね、数年前の夏に友達を無くしてしまったのよ。
それからあんまり…と言うか母親曰く、ほとんど笑わなくなってしまったって」
「「「…………」」」
ついさっきまで俺が夏を好きだと盛り上がっていたのが嘘みたいに静かに話を聞いていた。
「こっちに来たときも無理して笑ってるようにしか見えなかったんだけど…
たった2日で変わるものなんだね」
おばあちゃんの話す顔は穏やかだった。
「おばあちゃん、茹で終わったよ」
「そうかい?ありがとう、今行くよ」
「うん」