ひとナツの恋





夏もケータイで写真を撮るのを忘れてる。


「夏、写真いいの?」


「……ああ、忘れてた…」


そう言いつつもカメラを向けることなく消えた花火をぼやっと見つめてた。



「…夏?」

「ん?」


…返事をしてもこっちを向かない、いつもなら向くのに。



「夏、こっち向いて」

「…いやだ」



「夏!!」


無理矢理こっちをむけると…泣いていた。




「…………」

「…見ないでよ、ばかいと」

「なんじゃそら。
なんで泣いてんだよ…」

「別に…ちょっと思い出しちゃって」



涙を拭いて笑うけど、全然笑ってねぇよ。


「夏、何があったの?
…聞かせて?少しはましになるかもよ」

「……」


唇をかんで下を向く。



「なんでもないよ、大丈夫」


パッとこっちに向けた顔は笑ってた。

…ま、俺にしたら笑ってねぇけどな。



「そか」


それだけ言って夏の手を握った。





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