ひとナツの恋
「次の日ね、朝一で学校に行ったら鞄の中にはごみが入ってて水浸しだったんだ。
机の上には油性ペンで落書きもされてたんだ」
「…………」
「あはは、頭の中がまた真っ白になっちゃったよー」
「朝一だから誰もいなくて良かった。
ひとりで惨めに片付ける姿見られなくて良かったからさー」
「授業中もさー後ろから消しカスとか紙くず飛んでくるし、足引っかけられるし押されるしさー」
海渡はなにも言わない。
それをいいことに私の口も止まらなかった。
話すのをやめてしまえば代わりに涙が出そうで。
「生傷が絶えないのなんの…」
「…やめろよ。
もう、言うな」
「…………」
ぎゅって海渡の体に押し付けられた。
海渡の腕によって。
「夏、生きててくれてありがとな」
…やめてよ、そんなこと言わないで…
あれから今まで私は傷害をおこなった犯罪者だと思って、生きてきたんだ。
春菜の傷は私のキズよりも深いと。
死んでもいい人間なんだと思ってた。
「……ふ…う、ぅう…」