透明な子供たち
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母「ほら、急ぎなさい」
前を歩く母が、首を少しだけこちらに向けため息と共に出した言葉は、華那子(かなこ)の体に当たるとシャンと音を出して割れた。
噛み潰せば簡単にシャンと砕ける金平糖みたい。軽くて、トゲトゲしてて、脆い。
体にぶつかって砕け落ちた言葉を踏み潰し、母の元へと急いだ。
華那子の右手を母、左手を秋良がしっかりと握る。
引き摺られるようにして歩く華那子は、母の歩くスピードについていくのが精一杯だった
華「お父さんは行かないの?」
華那子の問いかけに、母はダンマリを決め込んでいた
その横顔は、目に涙を溜めてる様にも見えた
あくまでも" 様に "だけど。
そっと後ろを振り返ってみた
家の前で佇みこっちを見つめる父は泣いていた
どんどん遠くなる華那子達を、届かないモノみたいな目で見てた。
初めて見る父の泣き顔だった
やがて、父の姿は見えなくなってしまった。
別れの言葉すら、ここまで育ててくれた感謝すら、伝える事も許されなかった
左手をギュッと強く握った。
前を向いたままの秋良は、同じようにギュッと手を握り返した。