透明な子供たち
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海が直ぐそこにある街だった。
お世辞でも綺麗な海とは呼べないけど、夏になると海水浴で賑わっていたこの海が好きだった。
海の匂いって、プランクトンの死骸の匂いなんだよ
今よりもっと幼かった頃、秋良に言われたこと。
潮の香りが大好きだったのに、それをぶち壊されたみたいで数週間は秋良のことが嫌いだった
潮の香り、柔らかい砂浜、規則正しく戻る波
引越し先は、東京だった
東京に憧れは無かった。前の街からでも電車で通えたし、よく母に連れられて買い物に繰り出していたから、そこまで希望に胸を震わせる事は無かった。
何よりいきなり父と離れ離れになり、震わせるも何もって感じ
違う意味で震える。
新しい家は綺麗なアパートだった
3LDKでペット可
動物なんか居ないのになんでペット可なんだよ
急だったからここしか即日受渡が出来なかったのよ。母と秋良の話し声が聞こえてきた
シングルマザーになった母は働きに出ていた為、あまり家には帰ってこなくなった
華那子は母の代わりに掃除、洗濯、料理などの家事をした。
力を合わせて都内の片隅、静かに3人で暮らしを始めた
1年経ち、兄は中学生になった