透明な子供たち
華「…お兄ちゃん?」
秋「…お金が必要だったんだよ、だから」
華「欲しいものがあったら、お母さんとお父さんに言えばいいじゃん」
秋良はもう1度、キュルルと椅子を回し勉強机に向き直すと、力無く片腕を勉強机の上に乗せる
秋「…昨日、トイレに行く時に聞こえた。お父さんの会社が危ないって、間違いなくそう言ってた」
華「…え?」
父の働く会社が無くなる
その意味を、まだ本当の意味で理解出来なかったのに華那子はとてつもない不安に襲われた。会社?会社がなくなるとどうなるの?ねぇ、お兄ちゃん。
秋良は机の上の自分の右腕を辿り、その先にくっついている手のひらをいつまでも見つめていた。
今日初めて、罪で汚したその手のひらを。
" 少しでもお金を"…と秋良は、家の為にと罪を犯した
給食費ごときでこれからの生活が良い方向に向かうと思うなんて、やはり小学生の考える事だった
次の朝にはすっかり忘れていたその"悪夢" は日に日に、形となって現れ始めた。