あの時君は、たしかにサヨナラと言った
白い家と畑と佐和子
今日も疲れた。

むしろ、疲れていない日なんかない。

すでに10万キロ以上走っているぼろぼろの愛車で家路に着いた時には、身体中にじっとりと汗をかいていた。

職場の先輩から、ただ同然で買い受けたノアは、いつもどこかしら調子が悪い。

先月からスイッチを入れると狂った小鳥のようにキイキィ鳴いていたエアコンが、今朝、ついに壊れた。

あれほど耳障りだったキイキィが、今は懐かしい。

7月も半ば。

今年は、今までにない暑い夏になると、メディアがこぞって伝えた。

その通りだ。

毎日、毎日、とにかく暑い。

朝から、暑い。

日々、30℃超え。

今も、じっとりとした暑さが水飴みたいに体にへばりついているような不快感に支配されている。

俺は家の前の駐車場に車を止めると、黄色いポーチライトの灯った玄関めがけ、子供みたいに駆け出した。


ここに住みはじめて五ヶ月が過ぎた。

白い小さな家。

通りに面したベランダにはイスとテーブルが置いてある。

裏庭の畑では夏野菜が豊作だ。

住み心地は、はっきり言って最高。

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