白球に想いを
あぁ、なんだろう。凄くいいな。
これだよ。これなんだよ。
努力してる人って本当にかっこいい。
一瞬、ある人の顔が思い浮かんだ。
優しい眼差し。
素振りのすぎで、豆だらけの手。
泣き虫で、努力家で……。
私より、野球を取った人。
「翔汰……」
ながらく口にしていなかったその名前を口にした瞬間、この人達と、野球をしたいと思った。
あの人が、全てをかけたこの野球が、どんなものなのか。知りたかった。私も一緒に追い求めて見たかった。
「花奈ー??部活終わるよー」
後ろからかけられた声に振り返る。
「さくら。教えてくれてありがとう」
「んー?」
「野球部……」
「ああ!いーえ!」
でも、問題なのは監督が誰なのかということ。監督が分からなければ入部届けも出せやしない。
「というかさ、花奈臨時音楽部なのに平気なの??」
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