私は彼のことが苦手です。
 
「わかった」

「え?」

「俺が言いたいことなんて、5秒あれば十分だからな」

「は、きゃあっ!?」

「でも、場所くらい、選ばせろよ」

「ちょっと、湊真……っ」


湊真は私の腕を引き、湊真の部屋に私を押し込んだ。

扉の閉まる音がその場に響く。


「何するのっ! 監禁は犯罪っ」

「うるさい。黙れ」

「んぅっ」


壁に体を押さえつけられ、湊真の唇が私の唇にぶつかってくる。

言葉の通り、私を黙らせるためだけのキスは、熱を感じる暇もなく終わった。


「楓花」

「離して!」

「楓花、愛してる。俺たち結婚しよう」

「はいっ!?」

「よし。決まりな。即答で良かったよ。じゃあ、これ。はずすの禁止だから」

「ちょ……っ」


湊真は私の手を取り、薬指に指輪をはめた。

見覚えのあるそれは、付き合っていた頃、デートしていた時にたまたま通りがかったジュエリーショップで見かけた指輪のデザインに似ていて。

やわらかなラインがあまりにも綺麗で、一瞬にして私の心を掴んだ指輪に見とれていた私に、湊真は「その時が来たら、な」と言ってくれたんだ。

叶わなかった“その時”だったはずなのに……。

覚えてたの……? 私の返事がどうなるのかもわからないのに、用意したっていうの?

怒濤すぎる湊真からのプロポーズに言葉が出ない。
 
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