私は彼のことが苦手です。
「あら。何のことですか?」
「どうせ鍵がないって慌てて探してたんだろ? いつも言ってるだろ。入れる場所決めておけって。ただでさえ、お前抜けてんだから気をつけろよ」
「……海よりも大きなお世話です」
私の目の前にいるのは、今朝オフィスでも顔を合わせた“高宮さん”。
めんどくさい人に見つかってしまった。
実は先週も、それ以前も同じようなことがあって、同じことを毎回、口うるさく言われるのだ。
改善しようとしない私も私なんだろうけど、私のことなんか放っておいてくれたらいいのに。
「高宮さんのお部屋は向こう側でしょう? わざわざそれを言ってくださるためにこちらにいらっしゃったんですか?」
「まぁな。うずくまってる人間がいれば、何かあったんじゃないかって気にもなるだろ?」
「あら、お優しいんですね」
からかいにやってきただけのくせに。
「それに、あんなこと言われて黙っていられないからな」
「……あんなこと?」
「俺のこと苦手とか言ってたろ。そんなこと言うなよ。傷付くんだけど」
「……本当のことですし」
やっぱり聞こえていたのかと少し気まずく思う。
……いや、でも、本当のことだ。私は、この人のことが、苦手だ。どう接していいか、わからない。
その理由は……。