私は彼のことが苦手です。
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冷凍しておいた作り置きの料理を電子レンジで解凍し夕食を終えた後、ゆっくりお風呂に浸かった私は、ベッドの上でまどろんでいた。
何となくつけたテレビでは音楽番組があっていて、真剣に観るわけでもなく眺める。
番組ではどうやら想い出のラブソング特集があっていて、懐かしいものから最近のものまで様々な曲が紹介されている。
それまでは聞き流していただけの音の中に流れ出した曲にふと気付き、私はテレビ画面を見つめる。
曲も映像もあの頃のままで、懐かしい想いがこみ上げてきた。
あの頃、よくテレビから流れていた曲。
高校3年の初夏。
毎年恒例の行事がやってきた。それは、大学生による教育実習だ。
私のクラスの担任は化学の担当で、担任についた教育実習生が湊真だった。
年上の大学生の男というだけで大人に見えるのに、湊真はその容姿ゆえ、他に来ていた教育実習生とも違って見えて。
学生が湊真に興味を持つのには時間は全くかからなかった。
湊真の授業はとてもわかりやすく、授業以外でも誰に対しても平等に接する。
そんな湊真に積極的に近付いていく学生、遠くから見つめる学生、興味のないふりをしながらも気になっている学生、と様々だった。
そんな中、当時クラス委員だった私は自分から湊真に近付くようなことをしなくても、湊真と接する機会が多かった。
直接話すとよりわかる、周りの男子とは明らかに違う落ち着きや雰囲気。
……私も周りの女子たちと同様、湊真に惹かれるのはあっという間だった。
その頃は湊真に会える学校に行く朝が来るのがとにかく待ち遠しかったし、逆に帰るのは後ろ髪を引かれるような思いだった。
湊真の授業を受けるのが楽しくて、たとえ事務的なものであっても湊真と話すのが嬉しくて仕方なかったんだ。
そんな教育実習期間はあっという間に終わりの日を迎えた。
その高校には教育実習生に向けての色紙を書いて見送るという風習があって、それを渡す役目はケンカにならないようにとクラス委員をしていた男子の予定だったんだけど、その日に限ってお休みで私が渡すことになった。
すごく緊張したけど、渡した時に「ありがとう」と湊真から向けられた嬉しそうな笑顔に、私は泣きそうになってしまった。
この笑顔にはもう会えないんだ、と思ったから。
寂しい気持ちを強く感じながらも私は他の子たちのように個人的に湊真にお礼を言いに行くことすらできず、その日が終わってしまった。