からっぽ。
そんな光景を見ていたら、小さな幸せに触れたみたいで嬉しくなる。



「来月、デートしようか?」

坂下が、突然言う。

「デート?
良いケド……、ドコに?」

「それは、内緒。日にちが分かったら、連絡するから」


何を考えているのか分からなかったケド、私は断わらなかった。



12時近くなって、軽くウトウトしていた坂下も、帰る事になった。

私は、玄関まで見送りに出て、昼間書いた手紙を渡す。


坂下は、私の手紙の内容が分かっているかの様に、笑顔で帰って行った。


「ご馳走さま。美味しかったョ」


私の嫌いな“営業スマイル”とは、少し違った笑顔だった。



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