からっぽ。
《要一》



子供が生まれて十日。

俺は、裕美の実家に呼び出された。


昔、裕美と暮らしていた頃、子供が出来たらどんな名前にするか話した事があって、一緒に決めていた名前にすると、三日前に連絡があったのだ。


“彩葉(イロハ)”と名付けられた子供。

裕美が覚えていた事に、多少の驚きはあったが、成長していく子供の事を考えて、俺は承諾したのだ。


初めて入る、裕美の実家。


病院で、裕美の着替えを取りに帰った母親とは、すれ違いだった為に、顔を合わすのは初めてだ。


それに、歳の近い妹が居るハズ。


値踏みをされる事に憂鬱さを覚えながら、玄関のチャイムを鳴らした。



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