からっぽ。
「裕美が………、
くすりに手を出した…」



俺は“無”だった。

散々俺を苦しめて来た、怒りや悲しみの感情は、どうしたら出せるのか思い出せない。


ただ、裕美の父親から会いに来る。


事務的に記憶出来た。


彩葉の、指がくっついた足が、頭に浮かぶ。


俺の子供として、この世に生を受けた彩葉。

俺のせいで、辛い人生のスタートを切った。


本当なら、昨日より成長して行く娘の姿を、愛する人と一緒に記憶して語り、抱きしめて………


俺は、まだ抱いた事の無い娘に、詫びる事も出来ない。



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