からっぽ。
《歩実》



“彩葉”ちゃんは、持って来たガラガラと音がする玩具より、私の“鍵”に付いている、キーホルダーに夢中で遊んでいる。


「あー、あー」

と、良く喋り、良く笑う。


三人で居る部屋の中は、家族だと錯覚する程、穏やかな空気が流れて居た。


「アイツの血が流れてると思うと………」

坂下の不安と怒りが伝わって来る。


「でも、坂下の子供だから………。
持って生まれたモノよりも、これから育つ環境が大事だョ」


気休め程度の言葉しか出て来なかったケド、私は、真剣に伝えた。


「ありがとう……」

そう言って、坂下は眠ってしまった。



< 177 / 242 >

この作品をシェア

pagetop