からっぽ。
《歩実》



坂下との最後の電話から、二年の月日が流れた。


私は、一歩も前に進めないままなのに、今年も桜が咲いた。


『一番、好きな花だ』と、坂下が言い。

『下から見上げる桜が好き』
だと、私が言った。


そして私は、あの日、酔った私を送る途中に通ったという、桜並木の下に居る。

私達の距離が、近付いて行った、この場所。

そして、携帯を取り出し、写真を撮った。


三月の夜は、まだ寒くて、悴んだ手では中々上手に撮れなくて………


それでも私は、何度も何度もシャッターを切り、やっと一枚、キレイに写す事が出来た。





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