からっぽ。
《要一》



いつも、ラフな格好をしていた歩実さんが、スーツを着てかかとの高い靴を履いている。

良く見たら、化粧も髪型も違う気がする。



そんな事を考えていたから、久しぶりに香子ママと歩実さんが二人で来たのに、

「違う人みたいですね!」


『いらっしゃいませ』
より先に、そう言っていた。



あの、一人で来た時以来、香子ママと一緒に来る事が何度かあったが、いつもソフトドリンクを飲んでいた、歩実さん。


今日は、酔っているみたいだ。



俺は、黙って“瓶ビール”を出してみた。



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