後輩
01:ビターメモリー
2012 Winter
一面に広がるのは真っ白な雪景色。けれど僕の目にはそれが少しぼやけて、表情を固くした千咲先輩の顔だけがハッキリとしている。
見つめ合っているのだろう。確かに俺と千咲先輩は見つめ合っている。なのに、やっぱりこの身長差のせいでどうにもカッコがつかない。
いくら真剣な表情で見つめようとも見下ろされている、というこの状況が俺のちっぽけなプライドをズタズタにしてしまうのだ。
ああ、後数センチの身長があれば。そうすればこうやって見つめ合うこの空間に千咲先輩は少しでもドキドキしてくれたりするんだろうか。
そんなことを考えるうちに随分と時間が経ってしまっていたらしい。
話があると言ったにも関わらず黙りこくる俺に焦れたのか、先輩が強張っていた表情をぎこちなく緩めてヘラっと笑った。
「えーっと……どうしたの、由樹人くん」
マフラーに覆われた首をコテンと傾げるその仕草さえも、どうしようもなく可愛い。
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