後輩


「由樹人って中学時代はどんな奴だったんですか!」


 だしぬけにそんな事を聞く安に千咲先輩は少し迷うように視線を彷徨わせて、それからチラリと俺を見た。まるで俺の表情を窺うように。
 俺はそんな千咲先輩の視線に気づかないふりをして目を逸らした。


「由樹人くんは……すごく可愛かったかな」
「え~!?由樹人が可愛い!?嘘だ!」
「ほ、本当だよ?昔はあたしより背が低くてね、いつも話す時は一生懸命視線を合わせるために見上げてくるの。そこが何か健気で可愛いなあって」
「今の由樹人からは想像つきませんけど」
「あははっそうなの?確かに身長は随分と伸びたみたいだね」
「おい、由樹人~何でお前そんなしかめっ面してんだよ!お前の話してんだから混ざれよっ」


 安なりに気を回しての行動だったのかもしれないけれど、残念ながら俺には逆効果だった。千咲先輩の口から昔の俺の話なんて聞きたくもない。

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