後輩
ホットココアを持って戻ってきた由樹人くんは溜まっていた涙もすっかり引いて落ち着いたあたしを見て安心したように表情を緩ませた。
その笑顔に何だかちょっと泣いてしまいそうになる。弱くなった心の奥を柔く包み込むような由樹人くんの優しさがとても温かかった。
「由樹人くん、ありがとね」
「え、何がです?」
「えっと……ココアとか?」
「何ですかそれ」
くつくつと可笑しそうに笑いながら、由樹人くんが右の眉を歪ませた。本人は気づいていないみたいだけど、笑うと眉が歪むのは由樹人くんの癖らしい。
「千咲先輩」
「ん?」
「千咲先輩は、すごく優しい人です」
「え?」
「後輩思いだし、絵も上手だし、笑顔も可愛いし、すごく素敵な人ですよ!」
言い切ってから由樹人くんは沸騰してしまいそうな勢いで顔を真っ赤に染め上げた。唐突すぎる出来事にあたしまで顔が熱くなってしまう。