後輩
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あれから5日後。待ち合わせ場所はあたしの自宅から電車を乗り換えて30分程の遊園地に決まった。
連絡はほとんど友香と安くんの2人で取っていたらしく、友香はまだ由樹人くんの電話番号すら知らないようだった。安くん曰く、由樹人は少々警戒心が強く軽々しく他人と連絡先を交換したりはしない、だそうだ。
友香は難易度が高いほどやりがいがある、とか何とか言っていたし、気にしてはいないみたいだけど。隣で機嫌の良さそうな友香を見ていたら、なぜだかため息がこぼれた。
「どうしたの、千咲」
「あ、ううん。何でもない……」
「この間からため息ばっかじゃん、悩み事?」
「そういうわけじゃないんだけど……」
この状況が憂鬱だと思ってしまうのはどうしてなんだろう。やっぱり、由樹人くんに会うのがあの日以来だからかな。心の整理が未だにつかない。
モヤモヤした霧の中にいるようで、その不確かな感情はグラグラとあたしの心を揺さぶった。
「こんちわーっす!」
「……どうも」
約束の時間より少し遅れて、由樹人くんと安くんの2人がやってきた。
「いやー、女の子と遊園地なんて久しぶりだわー」
「2年の時も言ってたろ、それ」
「あれ、そうだっけ?」
「何でお前が遊園地に来る時はいっつも俺が巻き添え食らうんだよ」
「えーだってえ、そうでもしないとお前って彼女のことデートにすら連れていかなかったんじゃん?お前の彼女の方からお願いされてたんだっつの」
「この状況でそれを平気で言えるお前の脳味噌を見てみたいよ」
「あはは!こいつホント薄情な奴だからね!それに比べて俺は優しさに溢れてるからさ!」
「くっ……こいつ俺を売りやがった」
2人の愉快な会話を聞きながら友香とあたしは何とも言えない気分で笑顔を浮かべた。
それにしても由樹人くん、彼女がいたこともあるみたいだしやっぱり学校ではモテているんだろうな。
中学の頃に比べて随分と大きくなった体つきや整った目鼻立ちは、誰から見てもきっとイケメンの部類に入るだろう。
何だか遠くの存在になってしまったようで、少し寂しい気もする。