後輩
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あれから一週間、何の音沙汰もなかった安の口から突然「合コン行くぞ」という言葉が発せられた。昼休みのことだ。あまりにも突拍子がなさすぎて、言葉の意味を理解するのに時間が掛かった。
そして、午後の授業に向けて怠慢に動いていた俺の脳内が一気に覚醒して、飲んでいたカフェオレを吹き出しそうになる。
「は?合コン!?」
「そ、合コン!知り合いの伝手で参加させて貰うことになったんだよー」
スマホ画面に目線を落としながら簡単な説明だけで終わらせようとする安の腕をグイッと掴む。
冗談じゃない。彼女と別れたばかりで合コンなんて、今はとてもそんな気分ではないのだ。
「なあ安、無理だって。俺合コンとか行ったことないし」
「大丈夫だよ、そんなに気負わなくていいからさ」
「いや、そういう問題じゃ……」
「んじゃ、今日の夜7時頃に駅前で待ち合わせな」
「ちょっ、勝手に決めんなよ」
「いつまでも別れた女の事うだうだ考えてても道は開けねえぞ?新しい恋に進むのも大事だって」
「……でも」
「とにかく、今日の夜7時!絶対来いよ?いいな?」
安に念を押されて勢いのまま頷いてしまった。
やっぱり、安の考えることにろくなことはないと改めて認識しておこう。