後輩


「千咲さんって二十歳ですよねー?由樹人とはどういう知り合いなんですか?」


 俺の肩に馴れ馴れしく腕を回し、目の前のすっかり美人になってしまった千咲先輩へ質問を投げかけた安は好奇の眼差しで俺と千咲先輩を交互に見遣る。その視線が鬱陶しくて、回していた肩を容赦なく後ろに投げ払った。
 安の質問に千咲先輩がどんな顔をしているのか見るのが怖くて空になったコップに視線を落とすと、やがて俺の前方から、四年前と変わらない千咲先輩の柔らかな声が聴こえてきた。


「中学時代の後輩なの。同じ美術部員で家も近所でね、あたしが高校生になってからもよく会ってて」
「へ~!じゃあ会うのは何年ぶりなんですか?」
「……もう、四年くらいになるかな」
「家近所だったんですよね?」
「うんそうなんだけど……でもほら、あたし電車通学だったし会う機会も減っちゃって……」
「そうなんすか」


 目が、見れない。どんな顔をすればいいのか分からない。
 もう四年も前の話だ。過去の話としてさらっと水に流せばいいのかもしれない。あるいは俺がこんな風に考えているほど千咲先輩にとっては大したことでもないのかもしれない。どちらにしても、こんな風に拘っているのは俺だけだろう。
 ああ、何やってんだろう俺は。自分が情けない。なのに俺の心臓はまたチクチク痛んでいる。自分のガキっぽさに心底嫌気がさす。

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