呼吸(いき)するように愛してる
「はい…十年後、二十年後の事はわかりませんが……今の時点では〇パーセントです」

「ハハ…十年後か……そんなに、待てないな!」

安西先輩が乾いた笑い声を上げた。

「ごめんなさい!」

「もう、謝らないで……俺が、情けなくなるだけだから」

「はい!ごめん……あっ!」

「美羽ちゃん、言った傍から……」

思わず、二人で笑ってしまった。

「美羽ちゃんの気持ちは、よくわかりました!受け入れます!……俺、そんなに似てるの?美羽ちゃんの好きな人に」

どう答えようか迷って、目が泳いだ。

「俺にはそれを訊く権利、あると思うけど?」

安西先輩がいたずらっぽく笑って、私を見た。安西先輩の纏う空気が変わった。

「はい…顔は、似てないですけど。何というか……雰囲気が、似ています。特に、後ろ姿が……」

「そっか……俺をフるなんて、美羽ちゃん、いつか後悔するよ」

「はい!そうだと思います。…でも、安西先輩に何も言わずに付き合い続けている方が、もっと後悔すると思ったから……」

ニッコリと微笑んで言った。安西先輩も、フッと笑う。

「……俺、まだここでする事あるから、美羽ちゃん、もう行って。…初めてのうちの学園祭、楽しいものにするから!美羽ちゃんも、準備がんばって!」

安西先輩が、いつもの微笑みを浮かべながら言ってくれたので、私も笑顔で大きく頷いた。

「はい!がんばります!……安西先輩。先輩と一緒に過ごした時間は、短いものだったけど、図書室での時間は本当に楽しかったし、告白された時は嬉しかったです!今まで、ありがとうございました!」

そう言って深く頭を下げてから、生徒会室を出た。

「最後にその笑顔と言葉……美羽ちゃん、ずるいね」

私が生徒会室を出た後、安西先輩がそう呟いたのを、私は知るはずもなかった──

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