呼吸(いき)するように愛してる
高校生の時は『学業第一!』で、アルバイトは両親に許されなかった。…確かに、そんな余裕はなかったけど。

短大生になって、少しでもいいからアルバイトをしたいと、両親にお願いした。

長いお休みの時だけという事で、匠くん家のカフェでのバイトが許された。

ともママと聡くんは、違う町で趣味のような?喫茶店を始めたそうで、要お兄ちゃんがカフェを仕切っていた。

「よろしくお願いします!」

と、深く深く頭を下げた私に

「美羽のペースで、がんばればいいから!」

なんて、相変わらず甘々なセリフを言ってくれる要お兄ちゃんだった。

カフェでのバイト中、お客さんに声をかけられた事があったけど。すぐにスタッフの人が間に入ってくれたので、特に怖い思いはしなかった。

私も、自分なりにきちんと断った。あんな怖い思いは、もうしたくないから!


匠くんとは……ほとんど会えていない。

ケータイでお話するのが、私と匠くんの“普通の距離”になってしまった。

私が話したい事をワーッと話すと、相槌を打ちながら聞いてくれる。

私の話を聞いてくれる時の匠くんの微笑みが、目に浮かぶようだった。

ふと会話が途切れ、「じゃあ……」と匠くんに言われてしまうと、私は「またね」としか言えなくなる。

本当は、もっともっと話したい事がたくさんあるのに……

高校三年間の誕生日プレゼントは、いつも白いバラの花束が届いた。

花瓶に活けて部屋に飾り、眺めているだけで幸せな気持ちになれた。

毎日水を替えて、傷んできたバラの茎を切ってみても、暑い季節には、花はなかなかもたないようで……

元気のない花を見ると、私も軽く落ち込む。

お母さんに言われてドライフラワーにしてみようかとも思ったけど、やっぱり何か違う気がして……

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