呼吸(いき)するように愛してる
ともママに頼まれた『匠くんのお世話』は、平日の夕食一回を準備するだけだ。でも、私はそれ以外の事もしたいと思っている。

朝食やお昼のお弁当とか、洗濯とか掃除とか……

私の事を小さな頃から可愛がってくれた、仕事で忙しい匠くんへ、少しでも恩返しができれば…というのは建前で、本音は、少しでも匠くんの傍にいたい。

もちろん、そういう気持ちもあるけど『匠くんの傍にいたい!』という下心の方が、断然強い。

下心の部分は隠して、洗濯、掃除、どこまで私がしてもいいのか、匠くんに聞いてみなきゃダメだよね。

……匠くんに話したら、何て言うのかな……拒否されたら、どうしよう……

少しの不安を抱えつつ、でも、絶対にお世話させてもらう!という強い気持ちがあった。

匠くん、明日の日曜日はどうなんだろう?……もしかして、美里さんとデートだったりして……

勝手に一人で落ち込みながら、買い物を済ませた。

匠くん家に戻り、買ってきた物を片付け、匠くんの到着を待った。

匠くんの部屋以外の栗原家のお掃除は、ともママが帰ってきて、二日前にしてあるそうだから、玄関周りだけを、軽くお掃除した。

リビングのソファーに座って待っているうちに、うたた寝をしてしまったようだ。

何かの物音で、パッ!と目を開ける。

「ヤバッ!寝てた……」

辺りをキョロキョロすると、外から、車のエンジン音や、話し声が聞こえる。

匠くん、帰ってきた!!

玄関まで走り、勢いよく玄関扉を開けた。

引っ越し業者のトラックのすぐ傍で、匠くんが引っ越し業者の人と話していた。

玄関扉が開いたので、こちらの方を見て、目を丸くした。

「匠くん、お帰りっ!!」

「美羽っ!?」

満面の笑みで、私は匠くんを出迎えた。

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