呼吸(いき)するように愛してる
「ハァ~……」

ダイニングテーブルの前に座った匠くんが、大きな溜め息をついた。

「大丈夫?匠くん。引っ越しで疲れた?」

匠くんの前にうどんの入ったどんぶりを置き、座っている匠くんの顔を、覗きこむようにして訊いた。

「あっ、いや…大丈夫!……じゃないな。朝から動きっぱなしだったから、さすがに疲れた!」

眉尻を下げて笑いながら、匠くんが言った。

「そうだよね…やっぱり、私が手伝った方が……」

「いや!引っ越しは、俺一人で全然大丈夫だったから!美羽は、気にするな!」

匠くんが慌てて否定の言葉を、私の言葉に被せてきた。

「・・・」

苦笑しながら私も、匠くんの斜め前の席に座った。


出迎えた私を見て、驚いた匠くん。

何か言いたげだったが、とりあえず引っ越し業者さんに、荷物を家まで運んでもらう。

ダンボール箱が四~五個、衣装ケースも同じ数くらい?ダンボール箱二個を除いて、二階の匠くんの部屋まで運ばれる。

家具や電化製品はないので、引っ越し業者さんの仕事は、そこで終了。

私は引っ越しをした事はないけど、引っ越しの荷物って、一人分でもこのくらいですむものなの?とびっくりした。

さあ、次は私の出番!と腕まくりをして、はりきっていたのだが……

引っ越し業者さんが帰った後、すぐにともママに連絡をとる匠くん。

スマホで話しながら、眉間のシワがどんどん深くなっていく。

ともママから、今日の引っ越しのお手伝いの事だけでなく、普段の『匠くんのお世話』の事も聞いたようだ。

たっ、匠くん、怒ってる?私がいたら、ダメだった……?

不機嫌になる匠くんを見ながら、私はどんどん落ち込んでいく。

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