呼吸(いき)するように愛してる
ともママから『匠くんのお世話係』を任命されて、私は嬉しくて、あれもこれもしよう!とはりきっていたけど……

匠くんはその事を、今日初めて知ったのだ。私とこうやって、話したり、長い時間一緒にいるのも九年ぶり?になるのだし……

慌てたり、戸惑ったりするのも、“当然”なんだろう。

そういう私だって、匠くんに久々に会って、舞い上がり過ぎてた。

じっくりと間近で匠くんを見て、やっぱり、と言うか、思ってた以上に、と言うか……めちゃめちゃカッコよかった!!

五月に二十八才になる匠くんからは、大人の男の人の落ち着きと、“色気”とでも言うの?そういうのを感じた。

浴衣を着た匠くんを見た時も“色気”を感じて、男の人に対して、私どうしちゃったの!?て思ったけど……

私も多少は大人になってきて、そういうのも、わかるようなってきたつもり。……ちょびっとだけど。

落ち着いてみると、改めて匠くんから発せられているものに当てられて、クラクラしそうだった。

一人でテンションが上がってしまったのも、『匠くんに会えて嬉しい!』という気持ちだけではないのかも。

匠くんが纏うものに、すっかり逆上せてしまったのもしれない。

久々だったから、匠くんのカッコよさへの免疫が、弱くなっているのかも……

そんなバカな事を考えると、頬が熱を持ってきた。

「……とりあえず、晩ご飯を作ろう……」

フラフラと、キッチンへ向かった。


午後七時過ぎ──

自室で、引っ越し荷物を片付けていた匠くんに、声をかけた。区切りがつきそうなら、夕食にしませんか?と。

私が夕食を準備していた事に、目を見開いた匠くんだったけど。

私が匠くんの為に何かするのは、止められないと諦めたのだろう。

ダイニングテーブルの前に座ると、大きな溜め息をついたのだ。

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