呼吸(いき)するように愛してる
「「いただきます!」」

匠くんと短いやり取りをした後、二人で夕食を食べ始めた。


夕食を食べ終わったら、二人で食器を洗って、その日はそれで帰った私。

私が作った夕食を食べながら、目を丸くして「おいしい!」を連発してくれた匠くん。

今日は匠くんのびっくりした顔、何回見ただろう……

匠くんの事を想うと、いつも優しく笑いかけてくれる顔が、真っ先に浮かぶ。

私が我が儘を言ったり、突飛な事をしても、慌てず騒がず、余裕の顔で受け止めてくれる。

そんな印象が強い匠くんの、これまでとは違う顔が見られた事は、何となく嬉しい。

途中落ち込んだりもしたけど、匠くんの「おいしい!」の言葉も合わさって、今日の自分の行動に、自分で満足できた。

今日は、この気持ちのままで終わりたい。「もっと匠くんのお世話がしたい!」なんて言ったら、どんな拒絶の言葉や態度をとられるか、わからない。

匠くんに「おやすみ!」が言える喜びを噛みしめながら、私は隣の自宅に戻ったのだった。



*****



「美羽ちゃんは、彼氏いるよね?」

入社三日目、知花さんからの質問に、私は苦笑しながら答えた。

「いえ、いません!」

事務所には、ほとんど知花さんと二人きり。来客も少ない。デスクに並んで座りながら、こんな会話も気兼ねなくできてしまう。

どんな雑談をしていても、電話が鳴ればさっと切り替えられるのが知花さんだ。

見た目に反して…と言っては失礼だけど、知花さんは、仕事もできる人だ。

知花さん担当の仕事は、商品の仕入や売上の方だけど、私の担当する仕事もちゃんと把握している。

だから私も、日々仕事を教わっているのは知花さんだ。

細かい部分だけ、専務に確認している。

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