呼吸(いき)するように愛してる
「へっ!?」

匠くんの言っている事がわからなくて、変な声が出た。

「髪の毛?身体?洋服?何かはわからないけど、時々美羽から、俺とよく似た匂いがするなあって、前から思ってた」

「……あっ!あぁ~……」

匠くんの言動の意味がわかり、私は少し肩の力が抜ける。

「えっと~、それを言うのなら“全部”なのかな?」

「“全部”?」

今度は匠くんが、『意味がわからない』という顔をする。

「シャンプーとコンディショナー、ボディシャンプー、洗濯の時に使う柔軟剤。全部、うちも匠くん家も、同じ物を使ってるから」

「えっ!?そうなの?」

匠くんが、目を丸くした。

「前にネット通販で買ったシャンプーとコンディショナーがすごくいい香りで。その後、ボディシャンプーなんかも合わせた物が、まとめ買いで安くなってたから、ともママを誘ったの」

海外メーカーのその商品は、ドラッグストアー等で買う一般的な商品よりも、少し値段がお高めだった。

それが、まとめ買いをする事で手が出しやすい値段になっていた。

花やフルーツの甘い香りの中に、スパイシーな香りもして、私のお気に入りの香りだった。

匠くんが、自分専用のシャンプーなどを使っているのか、浴室に置いてある物を使っているのか。実は、ずっと気になっていた。

一緒の物を使っているのなら、かなり嬉しい……

「匠くん、自分専用とかじゃなくって、置いてある物を使ってる?」

「ああ」

「だったら、髪の毛、身体、洋服、全部私と一緒の香りだね!」

私が、ニッコリ笑って言うと、匠くんがわずかに眉を寄せた後、再び身体を屈めた。

私の首筋のあたりに顔を持ってきて、スゥーと息を吸う。

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