呼吸(いき)するように愛してる
「!?」

「美羽と一緒の香りだったんだ……でも、微妙に違う。……美羽の香りは、すごく甘いから……」

さっきよりも、距離が近い……!

身体は硬直して動かないので、なんとか視線だけを匠くんから逸らした。

一気に体温が上昇し、心臓はありえない程早く打つ。

「美羽……」

掠れそうな匠くんの声に導かれるように、私は、近すぎる匠くんを見た。

少し目を細めて、私を見つめる匠くん。 そういう匠くんの表情も、空気も、初めて見るもので……

……違う……私、こういう匠くん、初めてじゃない……?

匠くんから目が逸らせず、ただただ無言で見つめあう。

視線はどんどん絡み合い、このままほどけなくなる……そう思った時……

フッと小さく笑った匠くんが、私の右頬をムニッ!と摘まんだ。

「!?」

「腹減った!さっさと美羽の髪、乾かさなきゃな!」

身体を起こした匠くんは、ドライヤーのスイッチを入れて、再び私の髪の毛を乾かし始めた。

それからは、いつも通りの匠くんだったけど……

私の熱もドキドキも、簡単には静まらなかった。

匠くんのあの表情と空気──

それはもう、私の頭の中に焼き付いていた。
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