呼吸(いき)するように愛してる
ボソボソッと私が呟くと、私から身体を離した知花さんが、目を丸くしていた。

「須賀さんが美羽ちゃんの事を、もっとよく知りたいと思ったからでしょ?」

「そうなのかな……私、お年玉とか、そんなに貯まってないけど……」

「…定期預金からは離れて!男の人が女の人を誘うって、普通に考えれば、興味をもったからだと思うよ」

小首を傾げながら、知花さんが言った。

須賀さんみたいなカッコよくてモテそうな人が、私みたいな普通の子に、どんな興味をもつというの……?

私は知花さんに、曖昧に笑った。

「詳しい事が決まったら、また教えるから。よろしくね!」

知花さんに可愛くウインクされ、私はいろんな意味でクラッとしてしまった。



そして、翌週の金曜日、午後八時から、須賀さんを含めての、四つ葉銀行男子四人との合コンが決まった。

女子のあと二名は、知花さんの合コン仲間?が来るそうだ。

さすが、須賀さんと知花さん。できる二人は仕事も早い。

私は、しばらく憂鬱な気持ちを抱える事となった。

いくら乗り気でないとはいえ、その場の雰囲気は壊したくない。

四つ葉銀行さんには、仕事の方でもお世話になるんだし。

もう!どうして須賀さんは、私の合コン参加を条件にしたんだか!

あっ!夜いない事、匠くんにも言っておいた方がいいよね……食事は、お母さんが準備してくれるけど。その日は食事はいいって、言うのかな?

今まで、私が夜にいなかった事は、まだなかった。

『合コン』の事は、言わないでおこう。匠くんは、なんとも思わないのだろうけど。

あの日、いつもとキャラが違うと感じた匠くん。

あんな風になる事は、ないけど。……いや、そうじゃない。

匠くんは、私がずっと一緒にいた頃の匠くんと、ちょっと違う気がする。

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