呼吸(いき)するように愛してる
「っっ!!」

結婚を約束した人!?

息を呑んで、須賀さんを見つめた。

「聞いてなかった?はっきりといつになるとは言わなかったらしいけど、一応、上司だからね。栗原主任も、まるっきりの嘘は言わないと思う」

それまでと違う須賀さんの真剣な顔に、嘘は言ってないと感じた。簡単に人を信用しすぎだと、また笑われるだろうか?

結婚、結婚、結婚……匠くんが、結婚する……?

目の前が、真っ暗になるようだった。膝から崩れそうになるのを、なんとか踏ん張る。

「失礼します」

絞り出すようにそう言って、須賀さんに背を向ける。

「次は、美羽ちゃんの全部をもらうから!」

そんな言葉の意味は、今は考えられない。

一人でお店を飛び出した。

GW真っ最中の今、たくさんの人で繁華街は賑わっている。

家に帰ろう……

とりあえず、それだけを考えてタクシーの営業所がある大通りを目指す。

前だけを見て、周りは目に入らない……

営業所に着いたら、五分程待ってタクシーに乗る。

タクシーの中で、みちるちゃんにメッセージを送る。GW中に会って話がしたいと。

自宅に着いたら「早かったわね~!」なんて、お母さんに声をかけられる。

「ちょっと調子悪くて」なんて、眉を下げて笑う。

お風呂が空いていたので、すぐにお風呂に入った。髪を洗って、身体を洗って、ゆっくりと湯船に浸かる。

「フゥ~~……」

それまで張りつめていたものが、一気に解放される。

「匠くんが、結婚……」

わかっていた。いつかは、そんな日がくるって……

二年位前には、もうその約束はされていた。……匠くんも、もうすぐ二十八才。いつその日がきても、おかしくない……

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