呼吸(いき)するように愛してる
私が言葉を探していると、的確な質問をしくれる。涙の方が勝ってしまうと、背中を擦りながら、辛抱強く待ってくれる。

そんないつもの感じで、やっと話し終えた。

長い溜め息をつくと、氷がだいぶ溶けたアイスティーを飲んだ。

みちるちゃんは、途中から眉間に深いシワを寄せたまま、話を聞いてくれた。

あまり表情に出さないみちるちゃんのわかりやすい顔は、なかなかレアかも……

「私はやっぱり、これまでと同じ事を言う。ちゃんと、匠くんと話した方がいい。匠くんが結婚を約束した人が本当にいるのなら、美羽の気持ちに、ケジメをつけるきっかけになると思う。あと須賀さんとは、もう絶対に二人きりで会っちゃダメ!」

そう一気にみちるちゃんに言われ、その勢いに圧されるように「はい」と頷いてしまった。

「美羽、ほんと?」

少し目を見開いて、みちるちゃんが訊く。

「あっ!あぁ~……思わず勢いで、返事しちゃった。…でも、匠くんの事を好きでいるのは、やめた方がいいよね?」

そう答えたら、止まっていた涙が溢れてきた。みちるちゃんに、ティッシュを渡される。

「ありがと……」

「ん。……私が一番言いたいのは、そういう事じゃなくて。人間(ひと)の気持ちって、そんな簡単なものじゃないでしょ?美羽の長年の想いを、全部匠くんに伝えた方が、美羽も心が軽くなると思う。……心が軽くなってから、次の事を考えてみたら?」

匠くんに想いを伝えたら、心が軽くなる……?

そうなのかな……?

……匠くんと一緒にいる時間が積み重なると、いつか想いが溢れてしまうかも……そう感じた事もあるし、今でも、そう感じる。

思わぬ時に溢れてしまう前に、自分から想いを伝える事で、心が楽になる部分があるのかもしれない……

目を閉じて、フゥ~と静かに息を吐いた。

もうすぐ、匠くんの二十八才の誕生日だ。もし匠くんが、いいって言ってくれたなら、二人でお祝いがしたいな。

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