呼吸(いき)するように愛してる
買い物は済んでるし、ケーキは家で仕上げるかな?材料と、下準備した物を匠くん家に運んで……

そんな事を考えていたら、あっという間に自宅に着いた。

仕事着から着替えるが、いつもの部屋着ではなく、お出かけようのカットソーを着る。

鎖骨がきれいに見えて、淡いピンク色がお気に入り。

……なんだかがんばりすぎな気がして、いつもの細身のジーンズを履いた。

キッチンでバタバタしていると、お母さんがパートから帰ってきた。

「あら!おいしそう!」

仕上がった誕生日ケーキを見て、そう言ってニッコリ笑った。

「ほんと?それっぽい?」

私が眉尻を下げながら訊くと「ぽい、ぽい!」と軽く頷かれた。

……お母さんを、信じる!

それから、いろんな物を栗原家に運んでいく。事前に運べる物もあったけど、少しでも匠くんを驚かせたくて、その時まで何も見せない事にした。

最後に、匠くんへの誕生日プレゼントを持って栗原家に行く。

プレゼントは、名刺入れにした。就職した時に買ったというそれが、だいぶくたびれていたから。

本当は、もっといい物とか、いろんな物をプレゼントしたいと思ったけど……

私の想いを知った匠くんの、重荷になってもイヤだしね。

不器用で、要領の悪い私だけど…頭の中でのしつこい予習が役に立ったようだ。

二十時半を過ぎた頃には、ほとんどの準備を終えた。

キッチンと、テーブルを見渡して「よし!」と頷いた。

そのタイミングで、スマホにメッセージが届く。

匠くんかな?もう、帰れるとか?

期待をしながら、スマホを操作する。確かに匠くんからのメッセージだったが、残念ながら逆だった。

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