呼吸(いき)するように愛してる
『ごめん!急な仕事が入って、帰るの九時半過ぎるかも』

ガクッ!と項垂れるが、仕事なら仕方ない。

『了解!お仕事、がんばって!』

と、メッセージを返した。

『本当にごめん!!できるだけ急いで帰るから!』

というメッセージがすぐに返ってきて、フッと笑ってしまう。

『大丈夫!待ってるから、無理せずに気を付けて帰ってきて!』

そうメッセージを送って、スマホをジーンズのポケットに入れた。

二十一時を目標に準備をしていたけど、予定より早くできたし、匠くんの帰りは遅くなりそうだ。

ダイニングテーブルの椅子に腰かけて、フゥ~と息を吐く。

両肘をテーブルにのせ、頬杖をつく。

テーブルに並べた、一部の料理を眺めながら、ボォーッとしてしまう。

匠くん、おいしいって言ってくれるかな?ケーキは、最初からテーブルに並べておく?匠くんに想いを伝えるのは、いつ?食事が終わってからかな……

とりとめもなくそんな事を考えていたら、瞼がジワジワと下がってくる。

……っ!イカン、イカン!寝ちゃうところだった。いろいろと緊張して、この二日間なかなか眠れなかった。

仕事から帰ってきてからも、ずっとバタバタ動いていて、やっと今、腰を下ろして一息ついた。

そうしたら、急に眠気が襲ってきた。

頭を横に振って、両頬をペチペチと叩く。

高校受験の勉強をがんばっていた頃、みちるちゃんに無表情で言われた事を思い出す。

『身体の動きを止めると、すぐに眠くなるなんて、美羽は、私の弟達が小さかった時と同じだ』

「・・・何か冷たい物でも飲もう!」

キッチンに移動して、冷蔵庫を開ける。ほぼ匠くんの一人暮しとなっている栗原家の冷蔵庫にある冷たい飲み物は……

< 186 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop