呼吸(いき)するように愛してる
「缶ビールと牛乳だけ……」

だよね~!この二つだって、忙しい匠くんに頼まれて、私が買ってきてるんだもん。

「ビールなんか飲んだら、寝る自信あるし、牛乳って気分では、ないんだけどな……」

そう呟きながら、一リットルの牛乳パックを手に取る。

「軽っ!…あっ!!牛乳買ってくるの、忘れてた!」

少なくなっているのはわかっていたのに、匠くんの誕生日準備に気をとられて、すっかり忘れていた。

匠くんは朝一で、牛乳を飲むのが習慣で。それで、すっきり目が覚めるそうだ。

コップ一杯分は……ないか~……

牛乳パックを振ってみれば、チャプチャプと軽い音がした。

優しい匠くんの事だから、「ごめん!」と言えば、笑って許してくれるだろうけど……

「する事ないし、買いに行こっ!」

牛乳パックを冷蔵庫に戻し、テーブルに並べたお料理に、ラップをして、冷蔵庫に入れる。

キッチンやリビングの照明を少し落として、キーケースを持った。

一度自宅に戻り、財布を持つ。「散歩がてら、牛乳買いに行ってくる!」と、お母さんに声をかける。

「はい、はい、気を付けて!」お母さんの言葉に頷いて家を出た。

いつも買い物に行っている二十四時間営業のスーパーは、車だと五分もかからない。住宅街を抜けて行き、街灯もあるので、暗い場所も少ない。

いつもは自分に言い訳しながら、車で行ってしまうところだが、眠気覚ましも兼ねて歩いて行く事にした。

パーカーを羽織り、いつもスーパーに買い物に行く時に使っている折り畳めるマイバッグに、財布だけを入れてプラプラ揺らしながら歩いていく。

レジ袋が有料だからね。牛乳パックは、持ちにくいし。マイバッグは、必須!

五月も半ば。暑くもなく寒くもない、過ごしやすい季節だ。

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