呼吸(いき)するように愛してる

匠くんが生まれた月でもある五月は、大好きだ。

六月になって梅雨入りすると、ジメッとした空気に憂鬱になる事もある。

私の髪の毛、広がりやすいし……

普段車に乗ってばかりで、ほとんど歩かない私。勢いよく歩いていたら、軽く息が上がってきた。

……運動不足だな。私も匠くんみたいに、ジムでも行く？……なんてね。

信号がある車通りの多い道路を渡れば、すぐにスーパーがある。

スーパーで、牛乳と、一応眠気覚まし用のコーラ、チョコレートを買う。歩いたら、少しお腹空いたかも……チョコレートでも食べて、匠くんを待とう。

信号のある道路を渡り、再び住宅街の中を歩く。

少し歩いた所に、空き地がある。いつから空き地になっていたのか……よく覚えていない。今では、近所の人達が駐車場代わりに使っている。

何となくそちらを見ると、空き地の奥の方に、車が二台、並んで止まっている。

「匠くんの車……？」

思わず、足を止めた。

匠くんの黒のミニバン。ただのよく似た車かな？離れた所から見ただけでは、私は車種とかわからないし。

気になって、少し近付く。車の後部に付いているナンバープレートを確認すると……間違いない。匠くんの車だった。

どうしてここに、匠くんの車があるの？急な仕事で、遅くなるんだったよね……？

イヤな感じがする……きっとここは、何も見なかった事にして、さっさと立ち去った方がいい！……絶対、そうだ……

頭ではそう思うのに、私の思っている事なんか全然伝わっていないみたいに、私の足は匠くんの車に近付く。

匠くんの車の右手に、赤の小型の普通車。なんか、おしゃれ……美里さんの顔が浮かび、ブンブンと頭を横に振る。

並んだ車が、寄り添っているように見えるんだから、私、ヤバいかも。

街灯の明かりは車まで届かず、暗くて車内はよく見えない。