呼吸(いき)するように愛してる
みちるちゃんの声を聞いたら、ブワッ!と涙が溢れてきた。なんとか、それだけを言った。

『うん。すぐにおいで』

いつものように、何も訊かずそれだけを言ってくれた。

「ありがとっ!すぐに行く」

みちるちゃんとの通話を終えると、すぐにお母さんのケータイに電話する。

『もしもし?』

お母さんののんびりした声。

「お母さん、今からみちるちゃん家に行ってくる!」

『えっ!?今から?』

お母さんの戸惑った声。そうだよね。匠くんの誕生日のお祝いを、するはずなのにね……

「ちょっと遅くなるかもしれないけど、心配しないで!大丈夫だから!」

『ちょっと、美羽!た…』

お母さんは、まだ何か言っていたけど「ごめん!」と言って切った。スマホの電源も落としてしまった。お母さんへの言い訳は、何も浮かばないから。

ちょうど自宅の駐車場に着いたので、自分の軽自動車に乗り込む。スーパーで買った牛乳等が入ったマイバッグを、助手席に置く。

手の甲で、グイグイと涙を拭ってからみちるちゃん家に向かった。

みちるちゃん家にも、車だと五分程で着く。

みちるちゃん家の向かい、二軒隣くらいにやっぱり空き地があって、車がある時はそこに止めている。

空き地にしても空き家にしても、私が子どもの頃より増えている気がする。田舎だから、人口減少の影響かな?

……だから、見てしまったんだ……匠くんが……

また溢れてきた涙を、手の甲で拭う。

直接関係ないのに、今は全部がそれに繋がっていきそうだ。

みちるちゃん家の玄関のインターフォンを鳴らすと、すぐにみちるちゃんが扉を開けてくれた。

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