呼吸(いき)するように愛してる
「どうぞ」「ありがと」短いやり取りだけして、上がらせてもらう。

「美羽です!夜分遅くにすみません!」

いつもは、リビングに顔を出してみちるちゃんの家族に挨拶するのだが、今日は声だけをかけさせてもらう。

「は~い!ごゆっくり!」

みちるちゃんのお母さんの、明るい声が返ってきた。

みちるちゃんの部屋に移動する。移動しながら、みちるちゃんが話してくれた。

「美羽のお母さんから連絡があったから、大丈夫って言っておいた」

「…スマホの電源、落としちゃったから……ありがとっ!」

うちの家族は、みちるちゃんに絶大な信頼を寄せているから。私の言葉より、みちるちゃんの言葉を聞いた方が、お母さんも安心できるだろう。

部屋に入って、扉がパタンと閉まって、私はみちるちゃんに抱きついた。

「みちるちゃ~ん……」

「ん。とりあえず、すっきりするまで泣いていいから」

私より十センチ低いみちるちゃんに、すがるようにして泣いた。

みちるちゃんは、私の背中を擦ってくれる。

私はいつも、みちるちゃんに慰めてもらってばかりだ。

泣きながら、今まで考えないようにしていた事を考える。

「仕事で遅くなる」と匠くんは言ったのに、なぜか家の近くにいた。美里さんと一緒に。…抱きあっていて、美里さんは泣いているようだった……

匠くんは、どうして嘘をついた?美里さんと何を話していた?どうして美里さんは泣いていた?

……私のせい?私が、匠くんの誕生日をお祝いしたいと言ったから、二人は会えなくなったのかな?それとも、『結婚』の事を相談していて……

みちるちゃんにすがって泣きながら、私は一生懸命考えるけど、何もわからない。

……そもそも匠くんと美里さんの問題で、私なんかが考えても、仕方のない事なのかも。

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