呼吸(いき)するように愛してる
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スマホの電源を入れたら、匠くんからのメッセージや着信がたくさん……

匠くん家に帰ってきた事と、まだしばらく家には帰らない事をお母さんに電話した。

『美羽、匠くんに何も言わずに、みちるちゃん家に行ったのね?『美羽がいない!』て、匠くんが血相変えて来た時は、びっくりしたじゃない!』

「えっ!?…あっ、ごめん……」

『匠くんと、ちゃんと話しなさい』と、お母さんは最後に言って電話を切った。

匠くんは、私の事をいつも心配してくれるけど……『妹みたいなものだから』てだけじゃないって、思ってもいいのかな……

まだスーツ姿だった匠くんは、着替える為に自室に行った。着替える間もなく探してくれていたと思うと、ちょっと嬉しい。

スーパーから買った物を冷蔵庫にしまい、とりあえず落ち着こうと、紅茶を入れる事にした。

お湯を沸かし、紅茶を入れる準備をする。

二人分のマグカップに、紅茶を注いで、リビングのソファーに座った時、着替えた匠くんが二階から降りてきた。

私と少し距離を置いてソファーに座った匠くんに、紅茶を差し出す。

「ありがと」「どういたしまして」短く言葉を交わし、しばらく無言で熱い紅茶を啜った。

気持ちは落ち着いているつもりだけど、何からどう話したらいいのか……考えても、いつもうまくまとまらないから、自分の思うままに、話すしかないのだろう。

「匠くん、心配かけてごめんなさい!」

私は、ペコッと頭を下げた。

「うん」

「私ね、見ちゃったんだ。『仕事で遅くなる』て言った匠くんが、近くの空き地で美里さんと会っているのを」

「っ!…ごめん、美羽!でも、あれは……」

「匠くんっ!」

今日は、匠くんの言葉を遮ってばかりだ。ごめんなさい。でも、私の話を全部聞いてほしいから。

「匠くんの話は、後でちゃんと聞くから。…何も言わずに、私の話から聞いてくれないかな?」

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