呼吸(いき)するように愛してる
上目遣いで、ジッと匠くんを見つめてお願いした。

「わかった……美羽の話、全部聞こう」

少し視線を泳がせた後、小さく息を吐いてから匠くんは頷いた。

「牛乳がなくなりそうだったから、歩いてスーパーまで買いに行って、帰りに空き地に止まっていた匠くんの車を見つけたの」

匠くんが軽く眉根を寄せたけど、何も言わずにいてくれた。

「匠くんの車の助手席に美里さんが座ってて、抱きあってたよね?…最初は暗くてよく見えなかったけど、空き地の隣のお家の明かりがついて、見えちゃったの。美里さん、泣いてるみたいだった……」

途中から、視線を匠くんから逸らした。どんな顔をして私の話を聞いているのか……見たいような、見たくないような。イヤ、見ていられないのかな。

「どうして匠くんは、嘘をついたのかな?とか、美里さんは、どうして泣いているのかな?とか、わからない事だらけで……結婚の約束をしている匠くんと美里さんの邪魔を、私がしちゃったから、美里さんは泣いているのかな…て思ったら、苦しくなった」

チラッと匠くんを見れば、目を見開いて私を見ている。

「匠くん二年くらい前、銀行の上司にお見合いを勧められたって。…その時、『結婚を約束している人がいる』て、断ったんだよね?その相手は、美里さんだよね?」

聞きたい事はたくさんあるけど、今一番気になる事を聞いた。

とりあえず、自分の言いたい事が無事に言えたので、答えを待つように匠くんを見つめた。

匠くんは、目を見開いたまま私を見ていたが、大きな右手で目元を覆った。

「その…美羽に心配かけたくないと、変な嘘をついた事は、悪かった。ちゃんと美羽に言えばよかったと後悔している……でも、その前に。どうして俺が、美里と結婚するとか思ってるんだ?」

ゆっくりと話し始めた匠くん。途中で右手も外して、私の事を見つめる。

「えっ!?……だって匠くんと美里さんは、付き合ってるよね?」

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