呼吸(いき)するように愛してる
「二十歳の誕生日に、直接赤いバラを届けてくれたよね?…それまでの十一本のバラの花言葉は、『最愛』」

「うん」

「三本のバラの花言葉は『愛しています、告白』…あの日匠くんは、私に想いを告白してくれるつもりだったの?」

匠くんは、真っ直ぐに私を見つめている。その表情からは、匠くんの感情は読みとれない。

「自分の想いは、どうしても直接美羽に伝えたかった。早く仕事を終わらせて、会いに行くつもりだった。そんな日に限って、イレギュラーな仕事ばかり入ってきて……」

匠くんは、フッと溜め息をついた。私は、匠くんの一つの言葉、一瞬の表情も見逃したくなくて、匠くんを見つめ続ける。

「何度か利用している花屋に、花束を予約していて、閉店ギリギリに取りに行って、また仕事に戻った。結局いつもより遅くなってしまったけど、美羽に会う為、車を走らせた」

匠くんは、そっと目を逸らした。

「今から思えば、その時の俺は、冷静さをなくしていた。ずいぶんと遅い時間になったのに、何の連絡もなく突然美羽に会いに行った。二十歳になった美羽に花束を渡して、自分の想いを伝える事だけに囚われていた」

フッと小さく笑った匠くん。

「自宅に車を止めて、美羽ん家に行ったら、玄関が開いていて……美羽が、島とキスしてた」

「へっ!?ヒロくんとキッ、キス~!?」

匠くんの言葉に変な声が出た。キス~!?私とヒロくんが!?

なっ、何を言い出すの!匠くんっ!?

あまりの事に、何を言っていいのかさえわからず、ただ口をパクパクさせた。

「その時はそう見えた。でも、ここまで美羽と話して、俺の勘違いだったかもしれないと、今は思ってる。……美羽、あの日、島と何をしていた?」

視線を逸らしていた匠くんが、再び私を見つめた。

思い出せっ!思い出すんだ!……あの日、ヒロくんに送ってもらった。途中から、ヒロくんの機嫌が悪くなって……それから……

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