呼吸(いき)するように愛してる
驚いて固まっていただけの私は、いつしかその匠くんの行為に、拙いながらも必死に応えようとしていた。

そして気付く、全身の熱、身体の中心の疼き……

こんな感覚は知らない。どうしていいのかわからない。……でも……イヤじゃない……

もっと……!そう求めてしまう自分もいて、急に怖くなる。私は、何を求めているのだろう?どうなって、しまうのだろう……?

心も身体も苦しくなって、匠くんの脇腹辺りの服を、ギュッ!と握りしめた。

匠くんが、ピクッと反応した。

そっと私の唇は、自由にされる。

そしてそのまま、匠くんの胸に私の頭を押し当てた。

私は目を開いて、大きく息を吐いた。

「美羽、ごめん。抑えられなかった」

「うん……」

匠くんの言葉に、そう答えるのがやっとだった。

しばらくの間、匠くんに頭を撫でられたり、背中を擦られたりした。

匠くんの香りに包まれながら、私の身体の熱も落ち着いてきた。

右手で匠くんの胸を軽く押しながら、顔を上げる。

「匠くん、もう大丈夫」

匠くんは、眉尻を下げながら笑った。

「美羽……その、今言っても説得力ないけど……慌てずに、二人の距離を縮めていこう。……美羽の心と身体が、俺を受け入れられる準備ができるまで、ちゃんと待つから」

「ん……」

匠くんの言葉がなんかせつなくて、つい素っ気ない返事になった。

「……説得力、ないよな……でも、本当にそう思ってるから!」

私の目を見て、真剣に話す匠くん。

わかってるよ、匠くん。匠くんの言っている事、信じてない訳じゃなくて……

「グゥ~!!」

私が、自分自身の気持ちが掴めなくて、言葉を探していた時、私のお腹が盛大に鳴った。

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