呼吸(いき)するように愛してる
寂しい……胸がせつなく疼く。

目を開けて、匠くんと見つめあった後、匠くんが私の頭を自分の胸に寄せた。

「美羽、そんな顔をしたらダメだ。また、抑えられなくなる……」

抑えなくてもいい!

匠くんが吐息混じりに言った言葉に、心の中ではそう応えたのに、私の唇からは何も溢れなかった。

「おやすみ、美羽」

「おやすみ、匠くん」

匠くんは私のおでこに軽くキスをして、私から離れた。

匠くんの熱い視線を背中に感じながら、私は自宅に戻った。

玄関扉を閉めて、鍵をかけた。扉を背にして、ズズッと座り込む。

ようやく気付いた。

匠くんに触れたい、触れてほしい。もっと、強く匠くんを感じたい!

私にも、ちゃんと欲望があるんだ。

身体の火照りを逃がすように、私は大きく息を吐いた──

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