呼吸(いき)するように愛してる
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匠くんは待ってくれると言ったが、多分…というより確実に、私の方が待てない。

なら、それをどう匠くんに伝えるか……

さりげなく、そういう雰囲気にもっていくなんて、そんな高度なテクニックを私がつかえるはずがない。

……やっぱりここは、直球勝負?……ていうか、恋愛スペックの低い私には、それしか思い浮かばない。

「抱いてください!」

と言いきって、あとは匠くんにお任せしよう!

……て、本当にそんなセリフが、私に言えるの!?恥ずかしすぎる!……でも、もっと恥ずかしい事をするんだから、これは乗り越えなければいけない壁なんだ!

一人で青くなったり赤くなったりしながら、最後は両手で握り拳を作って気合いを入れる。

端から見た私は、かなりイタイ人だろう。

私なりに『ロストヴァージン計画』をたてる。決行は次の土曜日だ。匠くんの予定は、ジムに行くだけだと確認済みだ。

善は急げ、鉄は熱いうちに打て……今、私が感じている事を、匠くんに伝えたい。



「明日、どこか出かけようか?」

金曜日の夕食の時、ふいに匠くんにそう言われる。

「えっ!?……」

「明日のジムは、休んでもいいから。美羽、どこか行きたい所はない?」

「えっと~……」

匠くん、不意打ち!私に応用編は、ないんですぅ~!!

「あっ、明日の夜、私、ビデオ見たくて。みちるちゃんお勧めの海外ドラマ!レンタルしておくから、一緒に見てくれると嬉しい!……ダメ?」

私の脳ミソが、全力で働いた結果の嘘だけど。匠くんの不意打ちに、瞳がウルウルしてしまった。

「ダメじゃないよ。…美羽一人で見ると、みちるちゃんお勧めの海外ドラマ、一話目の途中で、寝ちゃいそうだもんな」

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