呼吸(いき)するように愛してる
「……一話ぐらいはちゃんと見るもん!…多分……」

薄く笑いながら言う匠くんに、軽く唇を尖らせながら反論した。

「じゃあ、明日の夜は、うちでゆっくりしようか!いくら夜ふかししても、次の日は休みだから」

「うん!匠くん、ありがとう!」

日頃から、わかりやすいと言われる私だが。今回は、ちゃんと匠くんをだませたようだ。……瞳ウルウルが効いたかもしれないが。

匠くんを手に入れる為に、こんな嘘だって平気でついてしまう。……女の子って、結構強かだ。

匠くんと再会した時は、傍にいられるだけでいいと思ってた。お互いの気持ちがわかった時は、「好き」て言える幸せを噛みしめた。

……それが今は……匠くんの全部がほしいと思ってる。心も身体も。私の全部を受け取ってほしいと思ってる。言葉だけじゃなく、もっと全身で、匠くんに愛されたい。

「恥ずかしい」や「怖い」より、そういう気持ちの方が強い。

『恋心』て、こんなに欲張りだったんだ……



翌、土曜日。

少し仕事をすると言って、午前中に家を出た匠くん。午後からジムに行って、夕方には帰ってくる予定。

お父さんとお母さんは、県外にあるお父さんの実家に泊まりで出かけた。

お父さん方のお祖母ちゃんが、転んで腰を打って思うように動けないとかで、急遽会いに行く事を決めたのだ。

私も就職祝いをいただいたのに、電話でお礼を言ったぐらいだ。近いうちに、会いに行こう!

お姉ちゃんは、いつもより早く起き出してきた。友達と出かけて、今日は友達の家に泊まってくるそうだ。

デートだな……と思った。お姉ちゃんがお出かけの時にはまず履かない、ジーンズを履いていた。どこかフワフワとしていて、やけに可愛く見えた。

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