呼吸(いき)するように愛してる
……『物足りない』私は、そう思っているんだ……

自分の唇が寂しくて、つい指で触れてしまう事がある。匠くんの唇を見つめて、また思い出すのだ。唇や舌の感触、温度……

「あっ……」

身体の中心が、さらに高い熱をもち、疼くようだった。

どうしたの……私ってば……まるで“欲求不満”な人みたい……

両手を自分の身体に回して、自分を抱きしめた。

このままベッドに倒れこんでしまいたい!……でもそんな事をすれば、私の身体の熱がさらに上がる。確実に……

自分でコントロールできない心や身体が、辛かった。

離れていても、私の心も身体も、匠くんに支配されている……それを、嬉しいとさえ思ってしまう自分もいる。

私、本当にどうしちゃったんだろう……

不安を感じながらも、この答えを教えてくれるのは、やっぱり匠くんのような気がする。

どのくらいそうしていたのか……

短い電子音で、我に返る。

『もうすぐ帰る』

スマホで匠くんのメッセージを確認する。

「っ!『もうすぐ』ってどれくらいよ!匠くん!?」

どこかボォーッとした頭のまま、窓を閉め、そうしてあったように、レースのカーテンだけを引く。

部屋の中を見渡し、どこも変わった所がないか確認する。

……なんとなく、匠くんが留守の間、私がこの部屋に入ったのを匠くんに知られたくないと思った。

掃除機と布巾を持って階段を降りて、片付ける。

手を洗って、今さら時刻を確認。十七時を過ぎていた。

「カレーをあっためる?…ご飯は、五時半にセットしたから、もうちょっと。……先にお風呂かな?…五時過ぎの晩ご飯じゃ、早すぎるかも……」

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