呼吸(いき)するように愛してる
喉の奥から、なんとか声を押し出した。匠くんを見つめたままニッコリ笑った。匠くんは、まだ心配そうな顔をしている。

「本当に元気?何もない?」

何もなくはないけど……とりあえず大きく頷く。

匠くんは小さく息を吐いた後、その大きな両手で私の頬をはさみ、触れるだけのキスをした。

私は目を見開いたまま、固まった。匠くん、このタイミングでそれはなしだよ~!!

私の顔を見て、フッと小さく笑った匠くん。

「ジムでシャワーをしてきたから、今はお風呂はいい。着替えてくる」

ポンポンと優しく私の頭を叩いて、リビングを出ていった。

何なの、あれ?匠くん、あんなにスキンシップをする人だっけ?……私が小さいの頃は、私からまとわりついていたし、小学生の頃は……

イヤ、今はそんな事どうでもいい……

どうするの?こんな私。気持ちは顔に出まくりだし、全身がずっと火照ったままだし、心臓は激しくドキドキ言ってるし……

こんなのでこの後、どう匠くんと接すればいいの!?

私は俯いて、ギュッ!と目を瞑った。握った両手にも力が入った。

……計画変更。今から匠くんの部屋に行こう。このまま不自然な態度をとるより、自分の気持ちを匠くんにぶつけよう。

静かに目を開ける。

「大丈夫!」

小さく自分に声をかけると、匠くんの部屋に向かう。

匠くんの部屋の扉の前で、一度深呼吸。

大丈夫!ちゃんと伝える!

扉をノックすると「どうぞ」と匠くんが返事をした。

ゆっくりと扉を開ける。

「っ!」

「どうした、美羽?」

着替え途中の匠くん、上半身は“裸”でした。少し前の私なら「もうやだ!」とか言って、扉を閉めてしまうところだけど。

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