呼吸(いき)するように愛してる
匠くんの視線にゾクッとした。匠くん自身も、周囲の空気も、一瞬で甘く色を含んだものとなる。

男の人なのにそんなに色っぽいなんて、ズルい。

「止めないでいい。匠くんの好きにして……」

匠くんから、小さな溜め息が聞こえたと思ったら、私はヒョイッと横抱きにされていた。

「っ!匠くん!?」

そのままベッドに優しく下ろされた。匠くんの手で、ポニーテールにしていたゴムを外される。

私に跨がって両手・両膝をつき見下ろす匠くん。

匠くんの熱い視線に心も身体も囚われて、ゾクゾクして、身動きできない。

匠くん、オトコの顔をして私を見てる……

そう感じたとたん、身体の中心が疼いた。

あっ……この匠くん、私、知ってる……ふいに思い出す。

遠くの大学に通う為に引っ越す匠くんと、この部屋でお別れをした時の感じ。

匠くんはあの時、オトコの顔をしていたの? ……だから私は、いつもと違う匠くんを怖いと感じたのだろうか?でも、それって……

「美羽、何を考えてる?」

いつもより低い匠くんの声。

「この状況で、どこかに意識を飛ばせるなんて……ずいぶんと余裕があるんだな?」

射るように私を見つめながら、唇の片端だけを上げて笑う匠くん。

私の知らないその笑い方は、意地悪そうでちょっと怖いのに、強い色香に酔わされる。

私の左手を持ち上げ、甲にそっとキスする。私の目を見ながら、指先にゆっくりと舌を這わせる。

「美羽の身体を、ゆっくりと解してあげるよ。……俺のギリギリまでは」

背筋が粟立ち、身体の中心が甘く疼く。私はもう、匠くんにとろとろに溶かされてしまうのだろう……

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